「手続き率」のことなど
受験生を10万人集めたと豪語する大学の入試担当者に、以前から気になっていたことを聞くと「嫌なことを聞くな」と軽くいなされてしまいました。気になっていたこととは、「一般入試が機能している大学はどのくらいあるのだろうか」というものです。
なぜ気になっているのか、もう少し詳しく説明しておきましょう。
大学の一般入試とは学力判定型の入試のことですが、その合格者数と入学者数の比率を手続き率といいます。私はこの「手続き率」を他のデータとともに発表すべきだと思っています。何故ならば、この数字が大学の経営に関わるものだからです。しかし、多くの大学は発表したがりません。それは、手続き率が低いと翌年の受験生が減ってしまうのではないかという懸念からです。
大学入試は本来、「入学したいと思っている高校生が、その大学で学ぶに足る基礎学力を身に付けているかどうかを判定するもの」だったはずです。それが、18歳人口の減少や進学率の上昇、大学数の増加など様々な要因が重なり、一般入試が本来の機能を発揮できなくなってしまったのです。合格しているのに入学手続きをする受験生が少なくては、大学教育の質の低下を招きかねませんし、ひいては大学の経営も成り立たなくなってしまいます。大量の受験生を一般入試でふるいにかけることが出来なくなったために、大学は入試改革をせざるを得なくなってしまったのです。
総合型選抜(AO入試)では個々人の能力や意欲・適性などを判断しようとしています。センター試験も個々人の能力を判断する方法に改革しようとしていますが、なかなか上手くいきません。高校卒業試験にしてしまえばいいと思うのですが。
当然のことですが、一般入試が十分に機能していた頃の合格可能性の指標である偏差値は、もう機能していません。進学の目標を明確にして、それに向かって努力をすれば、第一志望の大学で学ぶことが出来る時代になっています。しかし、「友達が進学するから」とか「大学ぐらいは出ておかないと」など、まだ大学進学そのものが目標になっているのが現実です。しかも、浪人してまで第一志望を目指す努力をしたくない、「今の実力で入れる大学ならどこでもいい」となっています。この「今の実力」って、まさか機能していない偏差値じゃありませんよね。
皆さん、もう一度「なぜ大学に進学するのか」をよく考えてみてください。安くはない入学金・授業料等を親が払い、勉学はそこそこに、学費のためとアルバイトに勤しみ、無為に過ごす4年間(4年で済めばいいですが)、もったいないと思いませんか。
私が大学受験をする頃は、偏差値も共通一次試験もなく、平和でした。
by MATSUTANI