小論文第11回 タラちゃん言葉「です」

 小論文作成の際に避けたいものとして「タラちゃん言葉」があります。タラちゃん言葉とは、マンガ『ザザエさん』に登場するタラちゃんの言葉遣いのことです。「行ってくるデス」「お帰りなさいデス」など、幼児語とはいえ、タラちゃんは一風変わった「です」の使い方をしています。高校生の書いた小論文にも、しばしばおかしな「です」が見受けられます。

 ×これからも頑張っていきたいです。

 これは志望理由書や自己アピール文で、最後の結びとしてよく目にするフレーズです。「今までの経験を生かして、これからの人生を頑張ります」という決意ですから何の問題もなさそうですが、これがタラちゃん言葉の「です」として問題視されるのです。いったい何が問題なのでしょうか。

 「です」は、助動詞「だ」の丁寧表現です。原則として、体言や形容動詞語幹、一部の助詞に接続します。

 〇ここは私の学校です。(体言に接続)
 〇星空がとてもきれいです。(形容動詞語幹に接続)

 この二つの例文の「です」が接続する傍線部は、原則通りそれぞれ体言と形容動詞語幹です。ところが、先に挙げた例文「これからも頑張っていきたいです」の「いきたい」は「動詞『いく』+助動詞『たい』(願望)」ですから、「です」の接続の原則から逸脱しています。このような例はほかにもあります。

 ×昨日のコンサートはよかったです。(形容詞「よい」の過去形)
 ×花がとても美しいです。(形容詞)
 ×そんなことをしてはいけないです。(動詞「いける」+助動詞「ない」)

 これらの「いきたいです」「よかったです」「美しいです」「いけないです」などの言い回しは、近年とみに多くなってきたように思われますが、口語、つまり話し言葉で使用されるべき言葉です。話し言葉としても、人によっては耳障りに感じられる表現ですので、友人や家族などの親しい間柄で使うべき言葉と考えたほうがよいでしょう。

 では、接続などの文法的知識がない場合、「です」を使用しても良いのか悪いのかの見分け方は、どうすればよいのでしょうか。

 →「です」を普通形の「だ」に置き換えてみる。

 ・ここは私の学校です。   → 〇ここは私の学校だ。
 ・星空がとてもきれいです。 → 〇星空がとてもきれいだ。

 このように接続が原則に則っている場合は、「です」を「だ」に換えても違和感なく文意が通ります。この場合の「です」は正しい使用法となります。

 ・これからも頑張っていきたいです。 → ×これからも頑張っていきたいだ。
 ・昨日のコンサートはよかったです。 → ×昨日のコンサートはよかっただ。
 ・花がとても美しいです。      → ×花がとても美しいだ。
 ・そんなことをしてはいけないです。 → ×そんなことをしてはいけないだ。

 接続が原則と異なるこちらの文例の場合は、「だ」に置き換えると日本語としておかしいことは一目瞭然です。このように「だ」に置き換えて違和感のある「です」は使用してはいけません。

 「です」は丁寧語です。せっかく丁寧に書いたつもりの表現なのに、おかしな表現となってしまったのでは元も子もありません。タラちゃん言葉の「です」には、くれぐれも気をつけましょう。

by KAITOU