小論文第13回 女性差別と「日本社会の構造的問題」

 東京オリンピックを半年後に控えた、この2月3日、オリンピック・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長の「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」との発言が「女性蔑視」との批判を呼び、その後、森会長は辞任に追い込まれました。また、森会長の発言は容認できるものではないが、この問題は森会長個人の問題ではなく日本社会の構造的問題だと指摘する声も少なからずありました。ここでの「日本社会の構造的問題」とはどのようなことなのでしょうか。

 かつての日本では、「男は仕事、女は家事・育児」という男女の固定的な役割分担がごく当たり前のこととされてきました。育児から老いた親の介護まで家庭内のすべては女性の役割とされ、男性が育児等に関わるケースはごく稀のことでしたし、仕事の場では男性有力者がものごとを決定し、下にいる女性たちはそれを「わきまえて」黙って従うことを強いられてきたのです。女性が仕事を持つことが普通のこととなった現在でも、個人の意識や社会の仕組みは変わっていないようにも思えます。

 毎年、スイスのシンクタンク「世界経済フォーラム」が発表する男女平等度ランキングがあります。この報告は、それぞれの国の進学率や賃金の男女差、企業幹部の男女比、国会などの男女比を総合的に評価したものですが、2019年のランキングでは、日本は153か国中121位でした。ちなみにアイスランド、ノルウェー、フィンランドがトップスリーです。イギリス21位、アメリカ53位、中国106位、韓国108位でした。

 日本は特に政治と経済の分野が問題で、政治分野の女性議員の比率は、衆議院がわずか10.2%、参議院20.7%、地方議員14.0%にとどまっています。経済分野でも管理職につく女性は12.5%に過ぎず、国際水準に遠く及びません。日本は先進国の中では最低の水準なのです。

 男女の差別をなくし、女性の社会参加のための環境を整えることは今や世界の趨勢(すうせい)となっています。日本でも、戦後の民主主義教育によって女性の高学歴化が進行し、社会進出も増加しています。1986年に「男女雇用機会均等法」が、1999年には「男女共同参画社会基本法」が施行され、制度的には一定の成果を見せています。しかし現実には、日本は世界から大きく取り残されているという実情が、図らずも今回のオリ・パラ組織委員会の会長辞任劇で世界に晒されることとなったわけです。

 日本は今、「少子化」という大きな問題に直面しています。このまま少子化現象が進むと、労働人口が減少して日本の経済成長率は低下し、年金や医療保険など社会保障制度が破綻してしまいます。そういう悪夢が現実のものとなりかねません。

 仕事を持つ女性の多くは、社会の差別に悩み、仕事と家事・育児との狭間で苦しみ、子どもを産むことを躊躇(ちゅうちょ)しています。こういう現実を前にして、あなたは何を考え、どういう言葉を発するでしょうか。

by KAITOU