小論文第3回 「外来語」と「カタカナ語」

 新型コロナウイルスの感染拡大が世界中で止まりません。

 日本政府は感染者集団を「クラスター」、感染爆発を「オーバーシュート」、都市封鎖を「ロックダウン」などと呼んでいますが、このことについて防衛相の河野大臣が、自身のツイッターで「なんでカタカナ?」と投稿すると、共感を示す「いいね」が24万件を超えたといいいます。カタカナ語の乱用を快く思っていない人が少なからずいるということなのでしょう。

 近年の情報量の増加からでしょうか、外国語の発音をそのまま表記するカタカナ語が盛んに使われるようになりました。IT(情報技術)分野や、グローバル化著しいビジネス分野ではカタカナ語が氾濫しています。若者の間でも漢字や仮名で書くべき言葉までカタカナ語で表記することが流行し、もはや「日本語の危機」と考える人もいるほどです。みなさんもテレビや新聞で、あるいは友人とのメールのやりとりで実感しているのではないでしょうか。耳に入る「カタカナ語」の意味が分からずに戸惑ったり、知ったふりをしてやり過ごしたことも一度や二度ではないという方も少なくないはずです。

 ところで、「カタカナ語」って何なのでしょうか。一般に「外来語」と言われている言葉もカタカナで表記されますが、この「外来語」と「カタカナ語」に違いはあるのでしょうか。

 「外来語」と同様、「カタカナ語」も外国から入ってきた言葉を発音通りにカタカナ表記したものですから外来語に違いありません。両者に明確な違いはないようですが、「カタカナ語」として問題視される場合は、あきらかに、いわゆる「外来語」とは異なるように思われます。その違いを確認しておきましょう。

 「外来語」は、主に欧米諸国から入ってきた語で、既に日本語と同じように使われるようになった語を指しています。日常用いられてその意味するところが何なのかが問題になることは、まずありません。それに対して「カタカナ語」の場合は、現在の日本でカタカナで表記されていますが、そのままでは理解されにくく、日本語の中に同化して使われている語とはいえないところが「外来語」と違います。つまり、多くの人に認知され、もはや日本語と同じように使用されている語が「外来語」です。それに対して、まだ理解困難とする人々の多い語が「カタカナ語」だといえるでしょう。

 なお、「カタカナ語」は、主に新しく日本に入ってきた外来の語になりますが、「スキンシップ」や「サービスエリア」などの和製英語についても言います。また、漢語も中国語からの借用語なのですが、文字を持たなかった日本人が長い時間をかけて自分のものとして消化してきた経緯から、ふつうこれを外来語とはいいません。

by KAITO