小論文第7回 進む少子化

 この6月5日、厚生労働省より人口動態統計が発表されました。それによると2019年の合計特殊出生率(一人の女性が生涯に平均何人の子どもを産むか推計した数値)が1.36で、前年を0.06ポイント下回ったそうです。

 日本における少子化は1970年代から徐々に進んでいます。第二次ベビーブームといわれた1973年(昭和48年)の出生数は209万人でしたが、2019年(令和元年)は86万人と、半世紀ほどの間に大幅に減少してしまいました。

 合計特殊出生率(この術語は覚えておきましょう)も、1973年には2.14だったのですが、2005年には過去最低の1.26まで落ち込みました。その後は緩やかに回復し、2015年に1.45まで持ち直したのですが翌年から再び低下に転じ、2019年には1.36と減少したわけです。4年連続の低下でした。合計特殊出生率は2.08を下回ると現在の人口を維持できないといいますから、この数値からも日本の少子化が急激に進んでいることが分かります。

 少子化の要因として挙げられるのは、まず未婚化・晩婚化でしょう。2018年の「生涯未婚率」(50歳まで結婚しない人)は男性23.4%、女性14.1%でした。日本人の平均初婚年齢も上昇の一途をたどっており、1983年(昭和58年)は、男性28.0歳、女性25.4歳でしたが、20年後の2003年には男性29.4歳、女性27.6歳に上昇しています。女性の場合、20年間で2歳以上も上昇しており、40歳以上の初婚も珍しいとはいえない状況になってきています。

 その原因としては、女性の高学歴化や就業機会の増加などによって結婚や出産に対する意識が変化してきていることがあります。結婚しても仕事と育児の両立や子育てにかかる経済的負担などの理由から子どもを産まないというケースも少なくありません。

 しかし、ここで注意しなければならないことは、女性が社会に出て仕事を持ち、自分のことを第一に考えるようになって結婚や出産を先延ばしにするために少子化が起こっているのだと、短絡的に考えてはいけないということです。少子化は女性だけの問題ではありません。その背景に、働く女性が仕事をしながら子どもを産み育てたいと望んでも、仕事と育児の両立を阻む社会的状況があるのだということを考えることが大切です。 

 かつての日本では、「男は仕事、女は家事・育児」という考え方が一般的であり、家庭における男女の固定的な役割分担がごく当たり前のこととされてきました。育児から老いた親の介護まで家庭内のすべては女性の役割とされ、男性が育児等に関わるケースはごく稀のことでした。女性が仕事を持つことが普通のこととなった現在でも、個人の意識や社会の仕組みは変わっていないようにも思えます。このような状況下では、子どもを産み育てることを躊躇(ちゅうちょ)してしまう女性が多いこともうなずけようというものです。  少子化対策には、働く女性の仕事と子育ての両立こそが最も大切だということを考えてみましょう。家庭における男女の固定的な役割分担や、女性の社会進出・社会的地位向上を阻む現状をどのように打破していくかを考えていきます。女性の能力を活かすことのできない社会は、すなわち男性を酷使する社会でもあるのです。

by KAITOU