小論文第2回 「思う」こと、再び
前回のコラムで「思う」と「考える」の違いについて考察しました。そして、
思 う⇒主観的・心情的な思考
考える⇒客観的・論理的な思考
ということを確認しました。この点についてもう一つ大切なことを付け加えたいと思います。次の文を見てみましょう。
a お母さんに何をプレゼントするか思う。
b お母さんに何をプレゼントするか考える。
一読してaの文章はおかしいと感じる人が多いことでしょう。
「思う」という言葉は心情的に判断することを意味しますから、「プレゼント品を選ぶ」という知的判断の表現の場合には用いられません。このことは「パズルを考える」とか「数学の問題を考える」とは言いますが、「パズルを思う」「数学の問題を思う」とは言わないところからも分かると思います。bの文章は、お母さんに何をプレゼントするかという「問題」を解こうという知的判断なので「考える」が使われているのです。
ここで、もう一つ確認しておきましょう。「考えたこと」を書く文章、すなわち小論文は課題として提示されていることについて解答を書く文章なのだということです。その課題は設問文に明確に示されている場合が多いのですが、時には与えられた資料等から問題点を見つけ出して書かなければならないケースもあります。いずれにしても小論文の場合には、そこに必ず「問題」があり、それをどう解決するかという方向でまとめなければなりません。その意味でも、制約のない作文とは異なるのです。
繰り返しますが、「思う」と「考える」の使い分けは、「主観」と「客観」の違いにあります。つまり、「思ったことを書くのが作文、考えたことを書くのが小論文」と言われるのは、主観的に綴るのが「作文」であり、客観的に綴るのが「小論文」であることを表しているということなのです。
このことはとても大切なことなのですが、実は、多くの高校生が客観的に「小論文」を書くべきところで「作文」型の主観的な文章を書いています。それでは、いくら六〇〇字、八〇〇字の答案のマス目を埋めても、合格の答案に辿り着くことはできません。小論文は客観的に綴るのだということ、心しておきましょう。
by KAITO