小論文第4回 「救急車 もう限界です」

 昨年(2019年)暮れの新聞に、「救急車 もう限界です」と救急車の適正利用を呼び掛ける、福岡県のある消防署の自作ポスターの話題が掲載されました。
現在の日本では119番で救急車を呼んだり、病院から病院への転院したりする際の救急車搬送は、患者の国籍・人種・納税の有無に関わりなく無料です。しかし2015年、財務省より救急車の一部有料化の提案がなされました。諸外国では救急車は有料が一般的なのに対して、日本では年間2兆円もの巨額な費用が自治体負担となっていることを問題視してのことです。

 日本の救急出動の件数は年々、増加傾向にあります。2017年の救急車による全国の救急出動件数は、634万2000件余となっています。この出動件数は1日平均とすると約1万7000件で、5秒に1回の割合で救急隊が出動していることになります。電話一本で、いつでもどこでも救急車が駆けつけてくれるという、緊急の場合には安心して利用できるありがたいシステムです。

 しかし、一方では、そのために重症ではない患者が安易に救急車を利用するという問題が生じています。2017年の救急車の出動のうち、実に48.5パーセントが「軽症」に分類される病気やけがでの、必要性の低い出動となっています。中には、「蚊に刺されてかゆい」「海水浴に行って、日焼けした足がヒリヒリする」「病院でもらった薬がなくなった」「裁縫中に針で指を刺した」などの、モラルが疑われるようなケースもあるのです。これでは有料化への声が出てくるのもうなずけようというものです。

 現在はまだ無料のままですが、救急医療という「聖域」に財務省が鋭いメスを入れようとしていることは間違いないでしょう。

 この救急車利用を有料化することに対して、あなたはどう考えますか。

by KAITO