幸せな生活の探求

 「えっ! これ電気で動いているんじゃないの?」

 納戸から出て来た蓄音機にかけたSPレコードの音を聞いた孫の第一声です。この話、若い人には通じないと思いますが、続けます。

 私たちは今、電気を大量に消費する社会で暮らしています。この電気に頼った安寧な暮らしが、ひとたび洪水や地震などの大災害に見舞われると、とても脆弱であったことを毎年のように思い知らされています。

 あなたは、停電して困ったことありませんか? 家電は全部ダウン。冷蔵庫、電子レンジ、電磁調理器、電気釜、風呂、もちろんテレビは映りません。スマホは充電できません。夏のクーラーは動かず、冬のストーブのファンは回りません。高層マンションではエレベーターが動きません。自動ドアが開きません。こうなると家電芸人の出番はありません。あなたはどうやって日常の暮らしを続けますか?

 LEDは電気を食いませんが、何万個も使って照明をすれば元の木阿弥です。LEDが電力を消費していることを無視しないでください。駅のホームに上がるエスカレーターやエレベーターを、元気な若者が何の抵抗もなく使っています。そして彼らは足腰を鍛えるためにお金を払ってスポーツジムに通います。東日本大震災の時に止まっていたエスカレーターは全部動いています。震災後は止まっていましたが、そんなに困らなかったのではないでしょうか。あのときの譲り合う優しさは何処へ行ってしまったのでしょうか。

 大震災直後の生活を忘れてしまい、利便性を追い求めるあまり、電気を使うことが当たり前になっていませんか。もう少し電気の消費を抑えた生活について考え実行していくのはあなたなのです。そして、エネルギーの大量消費は経済発展のために必要不可欠なことなのでしょうか。そのことを誰が考えているのでしょうか。政治家は考えてくれません。

 大学の存在理由に「社会の理想の姿を模索し続ける」ことがあります。幸せな生活の探求です。あなたが大学で学ぶことで、日常的になりつつある異常気象などの脅威から人々の生活を守り、未来を明るいものにすることが出来るのです。「社会の役に立ちたい」と思っている皆さんの大切な役割です。コロナの今がチャンスなのかもしれません。

 私ですか? 肘を打ったら電気が走りました。これでスマホが動きませんかね。

by MATSUTANI