小論文第9回 「フリーター」という生き方
「フリーター」という言葉をご存じでしょうか。「フリーアルバイター」が略されたもので、生活のため働きはするが、自分のやりたくない仕事には就きたくない、責任ある仕事もいや、自らの思うがまま自由に生きていたいと考える若年層の人たちのことです。
1980年代のバブル経済期の日本において、フリーターという働き方は社会に縛られない自由な生き方と考える風潮がありました。しかし、若年層そのものの人口減少に加え、フリーターの存在が社会問題化したことから、その数は2003年の217万人をピークに、以降はやや起伏を繰り返しながらも、全体としては減少の傾向にあります。
減少の理由は、少子化により日本の労働人口が年々少なくなり人手不足に陥る企業が増えて、以前よりも正社員として就職しやすくなってきていることが背景にあります。また派遣社員、契約社員といった雇用形態も増えています。フリーターでなくても自由な働き方をしながら収入を得られる手段が増したため、フリーターの道を選ぶ人が少なくなってきたということも言えるでしょう。しかし、減少傾向にあるとはいえ2018年現在で143万人。依然その数の多さが問題となっています。いったい何が問題なのでしょうか。
①経済の成長が抑制される。
フリーターは正社員と比べると昇給や昇格の機会はまれですし、ボーナスの支給もないケースが多いのです。そのため、学校卒業時の初任給などは正社員とほぼ同額であったとしても、年齢を重ねるごとに収入の開きが大きくなっていきます。国を支える労働人口に低所得者が増加することによって必然的に消費は低迷し、国家は税収減という事態になります。そうすると日本全体の経済が悪化し、国としての成長は抑制されることになります。
②国家の生産力や競争力がダウンする。
フリーターの場合、仕事の多くが単純作業であったり、専門的スキルがなくてもできる仕事であったりするため、キャリアアップがしにくいという問題もあります。アルバイトとして長年働き続けた場合、同世代のスキルを持った人との差がどんどん開いていくことになります。すると単純作業を繰り返す仕事を行う若者が増えるので就業能力が高まらず、国全体の生産力や競争力が下がります。
③日本が誇る社会保険制度が破綻する。
今後の日本は高齢化が進み、年金にかかる費用がますます増えることが確実視されています。一方で、生活に苦しいフリーターなどの非正規雇用の方の国民健康保険料や国民年金保険料の未納者が増えています。国民年金は現役世代が払った保険料を高齢者に給付するという「世代間での支え合い」の仕組みなのですが、これらの日本が世界に誇る社会保険制度は、生産年齢人口の減少と保険料未納者の増加で崩壊しかねないことになります。
フリーターとしての働き方には大きな自由度というメリットがあります。一方、安定した収入のないことで社会的な信用に欠けるともいえます。信用は目に見えるものではありませんが、生活していく上ではとても大切なものです。しかし、今なお140万を超える若者がフリーターとして生きる道を選んでいます。この若者たちの生き方について、あなたはどのように考えますか。
by KAITOU