大学の学びと基礎学力

 大学は、高校で身に付けた学力を前提に教育を展開しています。その高校は、義務教育の学力を前提に教育をしています。義務教育は文武両道で、全ての教科を学びます。いわば教養の種ですから、美術・音楽や体育などを軽視してはいけません。全教科をバランス良く習得しておきたいものです。これが、高校で学ぶための学力の基礎となります。

 高校で身に付けて欲しいのは、日本語の読み書きと言葉による自己表現、そして抽象的な概念の入り口である数学です。昔から言う読み書き算盤です。加えて、大学で学ぶための専門性、例えば文系だと国語・社会・外国語、理系は数学・理科です。

 英語は大半の大学が入試で課しています。英語の能力がさほど必要とされない学部・学科でも課されていますが、それは英語と他教科の学力の相関が強い、つまり英語の成績がいい生徒は他教科の成績もいいといわれていたからです。国公立大学のようにバランスの取れた幅広い学力を要求するのならばいいのですが、私立大学ではそれがいつの間にか選抜の道具になってしまいました。

 国際化で英語の必要性が叫ばれていますが、そのずっと以前から私立大学は文系理系にかかわらず英語必須の3教科型入試(2教科などというのもあります)です。英語を流暢に話せた方がいいのですが、今は小型で高性能の翻訳機もありますから、先ずは母国語である日本語の習得と、日本の歴史や文化・教養を身に付けておきたいものです。そうしないと、英語が話せても相手に伝える内容や話題性に乏しく、会話が成立しなくなってしまします。

 大学の学びは、講義を受け、調べ、レポートを書く事が中心です。近年、こうした大学の講義について来ることが出来ない学生が増えています。「理解できるがどうしていいのか分からない」「日本語を読めるが行動につながらない」「次に何をすればいいのかを指示して欲しい」などという学生です。自分の頭で考えない他力本願な学生です。実は、指示待ちの受動的な態度でいることは楽なのです。ですから、益々自分で考えなくなってしまいます。これでは大学教育が成り立つはずがありません。

 しかも、こうした学生のレポートの多くはコピペ(コピー&ペースト)の羅列です。自分で考えて文章にまとめる努力をせず、ネット上にある文章をコピーし貼り付けて形だけレポートに仕上げるのです。彼らに罪悪感はないようですが、コピペは犯罪です。つい最近、リツイートした画像の加工が著作権侵害に当たるという判断が示されました。自分の頭で試行錯誤する時にネット上の情報を参考にするのはいいのですが、その情報が正しい内容かを吟味し、引用する場合は出典を明記しなければいけません。このことは中学や高校で教わっているはずですが、基礎が身に付いていないのでしょうか。

義務教育から高等学校へ。その学びの積み重ねと並行して、ジャンルを限定しない幅広い読書に取り組んでください。あなたの基礎学力は更に磨きがかかります。

 私は最近、脳みそではなく頭皮に磨きがかかってきました。

by MATSUTANI